当院におけるがんの放射線治療

放射線治療は、放射線ががん細胞内の遺伝子DNAを傷つけることによって細胞を殺してしまう働き(殺細胞効果)を応用してがんを治療するもので、体外から腫瘍に向けて放射線を照射して治療する外部放射線治療が一般的です。
放射線の殺細胞効果はがん細胞に比較的生じやすいのですが、正常臓器・組織の細胞にも程度の差はあれ同様に生じます。がんが生じた臓器やその周辺の正常組織が腫瘍に比べて放射線に弱い場合は、がんの制御に必要な量の放射線を照射できないため、これまで放射線治療は十分に力を発揮できませんでした。
しかし、最近のコンピュータを中心とした医療技術の発達は目覚しく、放射線治療装置、治療技術の面でも特に今世紀になって画期的な進歩が見られました。すなわち、正常な部分への放射線の量を極力抑えて、がんに集中して放射線を照射して治療することが技術的に可能になってきたのです。
当院でも2007年(平成19年)に救命救急センター棟の地下に新リニアック放射線治療装置が導入されましたので、最新の高精度外部放射線治療が提供できる体制が整っています。具体的には3次元原体照射や強度変調放射線治療(IMRT)あるいは定位放射線治療といった治療法です。各治療法の詳細については省略しますが、これらは「切らずに治すハイテク放射線治療」とか「ピンポイント照射」といった表現で最近マスコミにもしばしば取り上げられますので皆様も見聞きされたこともあるかと思います。
全国的にも放射線治療で治療を受けるがん患者さんは急速に増えてきています。とは申しましても放射線治療ですべてのがんが治せる訳ではなく、がんの種類や場所や広がり(進行度)によっては他の治療法を選択したり、他の治療法と併用する必要があり、放射線治療の適応には専門的な判断が不可欠です。幸い当院は、がん診療連携拠点病院に指定されており、放射線と並びがん治療の3本柱である外科療法、化学療法についても最新の治療が提供できるスタッフ・体制が各診療科に揃っています。当院では各科と十分協議した上で専門の放射線科医師、診療放射線技師、看護師でチームワーク良く個々の患者さんの病状に応じた放射線治療を行っておりますのでご安心下さい。

(第一放射線科部長 堀井 直敏)

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