トモセラピー(TomoTherapy)
トモセラピーとは
近年、進歩の著しいがんの放射線治療の中でも注目を集めているのが強度変調放射線治療(IMRT)をはじめとする、高精度放射線治療です。「トモセラピー」は米国で開発されたIMRT専用ともいえる高精度放射線治療装置です。滋賀県では2013年に初めて当院に導入された1台のみが稼働しています。トモセラピーは、CT(スキャナー)装置ハイブリッドシステムで、画像診断用CTとよく似た外観で、内部に小型のリニアックが組み込まれています。治療台を動かしながら、細い放射線ビームを360度方向から連続回転しながら照射することによって、がんの病変部だけを狙い撃ちすることができます。トモセラピーではその独特の構造から、毎回の治療直前にリニアックのX線ビームで患部のCTを撮像し、治療計画時の画像との位置のずれを補正して精度高く照射することができる画像誘導放射線治療(IGRT)の機能が標準装備されています。

「日本アキュレイ㈱より提供」
トモセラピーの特長
トモセラピーによる高精度放射線治療の従来の放射線治療との違いは、強度変調放射線治療(IMRT)専用装置ですので、放射線を腫瘍(がん)の部分に集中させて、しかも腫瘍周囲の正常組織・臓器の障害を増やさない治療が短時間で効率よく行えます。下図は4方向からの固定したビームでのIMRTのイメージを示したものですが、トモセラピーでは全周囲方向から同様の照射をします。


「京都大学放射線治療科より引用」
CTを用いた位置確認で、正確な放射線照射が可能(IGRT)
当院では放射線治療開始前に撮像した治療計画CT画像に基づいてコンピュータを駆使して腫瘍病変部に放射線を照射する計画を行います。しかし、実際には腫瘍や周囲の臓器・組織は日々その位置は少しずつ動いています。(より正確に腫瘍に放射線を照射するには、こういった日々の腫瘍の動きに合わせて照射位置を補正して治療する必要があります。)トモセラピーでは毎回治療直前に治療を受ける姿勢(体位)のままで撮像して腫瘍や周囲臓器の位置を確認し、ズレを補正して正確な照射することができます。このような照射方法は画像誘導放射線治療(image-guided radiotherapy:IGRT)と呼ばれ、高精度放射線治療を行う上で欠かせない技術ですがトモセラピーでは標準的に治療のプロセスに組み込まれています。下図は最初に設定された治療計画画像(白黒画像)に治療直前に撮像したCT画像(青緑画像)に重ねて表示して位置の微調整を行っている頭頸部がんと前立腺がんの治療例を示したものです。


複数かつ長い照射が可能
トモセラピーでは図のように、内部の小型リニアックを回転させながら、治療台(ベッド)を移動する事にって、頭から足まで、らせん状に連続して放射線を照射できます。当院にある汎用型リニアックの場合、最大40cm×40cm範囲の照射が1回で可能ですが、それ以上に長い病巣の場合、照射範囲を分割して行う事になります。その際のつなぎ目の放射線量の計算や、位置合わせは誤差も生じやすく煩雑ですが、トモセラピーの場合、体軸方向に135cmまでの長さがつなぎ目なく1回で照射可能です。
外来での治療が可能
通常トモセラピーによる1回の治療時間は、およそ20~30分程度を要します。当院では前処置の必要な患者さんや、化学療法等他の治療との併用にも対応するため、患者さん毎にお1人30分予約枠を設定しての予約制を採っています。前立腺がんのIMRT等、お仕事を続けながら通院で治療を受けていただくことも多く、また症状によっては必要時入院していただき治療を継続するなど、適宜柔軟に対応しております。
また院内での他診療科との連携は言うに及ばず、滋賀県がん診療広域中核拠点病院、地域がん診療連携拠点病院として地域の他施設との連携にも力をいれており、他施設に入院中の患者さんでも通院可能な方は当院でトモセラピー治療を受けて頂いております。